2018/05/06

居酒屋に入ってメニューを開くと、カクテルの欄に必ず載っている「ジン・トニック」。飲んだことのある人も多いのではないでしょうか。
ジン・トニックは名前の通りお酒の「ジン」と、炭酸飲料水の「トニックウォーター」を割ったもので出来ています。
ではこのお酒のジン、そもそもどんなお酒なのでしょうか?
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ジンは「世界四大スピリッツ」
ジンはスピリッツと呼ばれる蒸留酒です。蒸留酒というのは醸造酒を蒸留して作ったもの………つまり、簡単に言うと「元々度数の低いをお酒を火にかけて蒸留して、よりアルコール度数を高めたもの」のことです。
このスピリッツの中で特に世界中で多く広く親しまれているのが
- ジン
- ウォッカ
- テキーラ
- ラム
計4種類になります。これらは様々なカクテルの材料として使用されています。
ジンの原材料
ジンは大麦・ライ麦・ジャガイモなどを原材料としてます。これに「ジュニパーベリー」というセイヨウネズの球果(ヒノキの一種の果実)やボタニカルという薬草成分を加えて作られています。ジンの本来の独特の鋭い香り・風味はこの薬草成分由来のものです。
とはいえ他のスピリッツと比べて個性はそこまで強くないため、多種多様なカクテルの材料として用いられています。
そもそも誰が作り始めたのか?
ジンを最初に作ったのは誰なのかは現在わかっていません。
最も有力な説は、11世紀頃にイタリアの修道士がジュニパーベリーを主体としたスピリッツを作りそれが発祥だ、と言われています。
19世紀イギリスで一時期は「不道徳の酒」と呼ばれる
その後17世紀後半にオランダのライデン大学医学部教授フラシスクス・シルヴィウスが、解熱・利尿用薬用種「ジュニエーヴェル・ワイン」を作ります。これが当時オランダ貴族だったオレンジ公ウィリアム、後のイングランド王・ウィリアム3世国王がイギリスへ持ち込み人気を博するようになりました。
この間に名前も元々の材料の「ジュニパーベリー」から「ジュニエーヴェル」、「ジュネーヴァ」………というように段々と変わっていき、最後は英国風に短く縮められて「ジン」となった、と言われています。
時代は変わり18世紀、産業革命に前後してロンドンなどの大都市に労働者が流入してスラム街が形成されました。この時価格が安くアルコール度数の高いジンは彼らに好んで飲まれ、「ジン中毒」ともいえる現象になりました。
19世紀になるとジンは18世紀の悪評を引きずったまま「労働者の酒」「不道徳の酒」として、貴族や健全な者の飲む酒ではない、とまで言われました。その時代に花婿の出費会計書に「ジン」の名が入っていたことを知った花嫁の親が婚約を解消した、という逸話が残るほどでした。
そして20世紀、イギリス元首相にも愛されたジン
20世紀になるとようやくジンの悪評も薄れ、カクテルベースとして上流階級でも一般的なお酒となりました。
時のイギリス首相、名門貴族出のウィンストン・チャーチルはほとんどストレートのジンの近い特別なエクストラ・ドライ・マティーニを好んで飲んでいたと言います。
ドライ・ジンなど様々なジン
そして現在、最も世界で飲まれているのは「ドライ・ジン」という別名ロンドン・ジン、イングリッシュ・ジンとも呼ばれるロンドンが本場のジンだと言われています。
この他にもジェネヴァ・ジン(オランダ・ジン)というより原型に近いオランダのジン、
シュタインヘーガーという生のジュニパーベリーを発酵して作られるドイツのジン、
オールド・トム・ジンという今では数少ないドライ・ジンが作られる以前の作り方のジンなどがあります。
ジンを使った様々なカクテル マティーニは「カクテルの王様」
上記したようにジンは今日たくさんのカクテル材として使用されています。ジン・フィズ、ジン・トニック、ジン・バック、ジン・ライムアラスカ、カルーソー、ギムレット………
しかし中でも特に有名と思われるのがカクテルの王様と言われる「マティーニ」です。
ドライ・ジンとドライ・ベルモットをミキシンググラスでステアし、ショートグラスに注いでカクテルピンでを指したオリーブとレモンピールを絞りかける、実にシンプルなカクテル。ですがそれだけに作り手のバーテンダーの力量が問われ「カクテルはマティーニに始まりマティーニで終わる」とまで言われます。
そもそもカクテルというのは元来自由に創意工夫を凝らすものなので、シンプルなレシピほど挑戦し甲斐があるのでしょう。ジン以外を使ったマティーニのレシピもあるほどで、代わりに日本酒を使った「サケマティーニ」なるものまであるのだから驚きです。
飲む側のこだわりも中々で、上述のチャーチル元首相などはより辛口なマティーニを求めて「横目でベルモットのボトルをわずかに眺めながらグラスにストレートのジンを一杯注ぎ飲んだ」「執事にベルモットを含ませてジンを注いだグラスにベルモット、と息を吹きかけさせた」という嘘か真かの逸話が残されています。